M249
M249
が、言っている当人達からして、やはり動揺していた。目前の敵である幸一から、眼を離してしまったのだから。
幸一がコートから取り出したのは、M13よりも大きなライトマシンガン。アメリカ軍ではM249の名で採用されている、FN・ミニミ。装填されたゴム弾が薙ぐように掃射される。
殺傷力がないとはいえ、音速を超える物体をその身に受けて無事でいられる訳がない。五割方の組員はこの奇襲をまともに被ってしまった。しかも、銃声が爆音によって紛れ、大多数の組員は何が起こっているのか現状を把握し切れていない。
何人かが他の組員がやられたのを視界におさめ、銃を幸一に向ける。
ここで森野と大沢もようやく、この爆発が幸一の仕掛けたものである事を悟った。
幸一がフランクにてこずったのは、この爆発までの時間を計算しての事だ。そして、時間を稼いでいると見破られないよう、幸一はわざとフランクの攻撃を最初に受けた。ダメージを受ければ、てこずってもそれほど怪しまれないだろう、と。
組員が放った鋼鉄の凶器は漆黒のメックコートを捉えたものの、貫通してはいない。
「クッ! カーボン・ナノチューブですか?! 頭を狙いなさい、そのコートは防弾素材です!」
ただの防弾素材ではない。地球上で最高強度の人為的構造分子だ。
森野の的確な指示に、組員は幸一の頭を狙うが、未来予測を行なう幸一の頭部を捉えるのは至難の技。
ほんの一瞬で形勢は逆転しかけた。
二発の銃声が響くまでは。
「動くなぁ! 動けばこの化物の命はねえぞっ!」
機転を利かせた組員の一人が、マナの太腿を銃弾で打ち抜いたのだ。気泡がブクブクと泡をたて、傷口が再生しかけているが、打たれた薬のせいか、すぐには回復しない。
幸一は、瞬時に青ざめた。その顔色を見た組員は、自分の機転が最善のものだったと確信する。
……隣りにいた森野の身体が、小刻みに震えている事に、気付くまでは。
「な、何をしているのですかっ! は、早くその化物を殺しなさい!」
何を言っているのか? 殺してしまったら人質の意味がないではないか。しかも、この化物をサンプルとして欲していたのは森野で、殺してはいけない、傷をつけてはいけないと口が酸っぱくなるほど言っていたのも森野自身ではないか?
「逃げろ! 死にたくなかったら早く逃げろっ!」
幸一の怒声が、疑問の為に身体を動かせなかった彼を救った。幸一に叫ばれた事で顔を上げた彼の頬が、パックリと裂けている。
何が起こったのか、さっぱりわからなかった。まさか、マナの手刀が自分の首を狙い、幸一の呼び掛けで動いたおかげで、頬が裂ける程度の軽傷ですんだなどとは、夢にも思うまい。
「早く逃げろっ! 普通の人間が」
警告は遅かった。マナを撃った彼は、放物線を描いて吹っ飛んだ。とめてあったベンツ付近まで吹き飛ばされた組員は苦痛に呻き声をあげている。
「こ、これは……!」
大沢は絶句しつつも、脇にいる森野に聞く。震えた声音で森野が答えた。
「……吸血鬼には、音波によって他者の五感を乱す器官『撹乱器官』が心臓のすぐ脇にあります。これを保つ為には、動物なり人間の血が必要です。この力を使わせないよう、私は軟禁中、彼女に血を与えませんでした」